Androidデバイスの画面をリアルタイムで投影する方法
Androidデバイスの画面をリアルタイムで投影する方法
製品のデモや操作内容の共有のために、Android デバイスの画面をリアルタイムでモニターやプロジェクターで投影したい場合、外部製品が必要となります。
iPhone の場合は専用の HDMI アダプターや、 iPhone 15 Pro 以降であれば UDB-C to HDMI ケーブルを用いることで相性問題等はなく表示できますが、 Android の場合はデバイスにより実現可否が異なります。
デバイスによっては使用できない方法や、出先での利用が難しいものなどもあるので、今回はメジャーな方式について整理してみたいと思います。
主な画面投影方式について
方式 | デバイス側の 機能対応 | 外部環境の影響 | 初期セットアップ時 投影 |
---|---|---|---|
DisplayPort Alternate Mode | 必要 | 特になし | ○ |
DisplayLink | なし | 特になし | × |
Chromecast | なし | 要 Wi-Fi 環境 | × |
画面表示アプリ | なし | 要通信環境 | × |
デバイス側の機能対応は、デバイス側の仕様として機能対応が必要であるかについてとなります。
外部環境の影響は、実施時に環境によりうまくいかないことや、外部の通信環境に依存するかについてとなります。
初期セットアップ時投影は、デバイスが初期化された状態からセットアップを開始する時に投影可能であるかについてとなります。
初期セットアップの流れや、 EMM へ完全管理対象 (Fully managed) や専用デバイス (Dedicated devices) として登録する画面を投影したい場合の参考としてください。
また、以前用いられていた方式として microUSB ポートを用いる MHL、ミラーリングを行う Miracast 等がありましたが、執筆時点の 2024 年ではいずれも対応デバイスの販売が行われていないようなので割愛します。
DisplayPort Alternate Mode
概要
映像周辺機器に関する業界標準化団体である VESA が制定している、 USB-C 端子から HDMI 信号を出力する方式となります。
USB-C ポート搭載の一部 Windows デバイスや、iPhone 15 Pro 以降の USB-C 対応モデルでも利用できる方式と同一のものとなります。
対応デバイスであれば、 OS セットアップ画面を投影することが可能な唯一の方式となります。
必要なもの
出力を行いたいデバイスが DisplayPort Alternate Mode にハードウェア、ソフトウェアの双方で対応している必要があります。
また、本方式に対応したケーブルやアダプターが別途必要となります。
方法としては以下のようなものがあります。
- USB-C プラグから HDMI ジャックへの変換アダプター ※別途 HDMI ケーブルが必要
- USB-C プラグから HDMI プラグを有する対応ケーブル
- USB-C プラグから USB-C プラグのケーブル ※要対応製品
利用における注意点
対応製品の見極めが非常に難しく、主な仕様としても記載されていないことが多いため、対応ケーブルやアダプタを購入しても利用できなかった、というケースが生じやすい方式です。
DisplayPort Alternate Mode は、USB-C ポートから USB 以外の信号を送受信するための Alternate Mode を用いて、 DisplayPort 信号を扱うものとなります。
DisplayPort Alternate Mode は、 USB 3.1 以降で利用可能なオプションとなりますが、対応には専用チップの搭載が必要であるため、デバイスにより対応可否が分かれている状況です。
非対応デバイスを大雑把に見分け方の一つとして、対象デバイスが USB 2.0 か、USB 3.1 Gen1 以降であるか、があります。
DisplayPort Alternate Mode の対応は少なくとも USB 3.1 Gen1 以降である必要があるため、比較的価格を抑えたデバイスは基本的に非対応となります。
なお、 USB4 では必須要件と定められていますが、執筆時点の 2024 年時点では搭載しているデバイスが確認できておりません。
USB 3.x では上述のとおりオプション機能であるため、 USB 3.1 Gen1 以降に対応しているとしても、 DisplayPort Alternate Mode に対応しているとは限らないものとなります。
例として、 Google Pixel 8 は USB 3.2 Gen2 の USB-C ポートを搭載しており、 DisplayPort を出力する専用チップも搭載されているため、 Android 14 QPR3 Beta 2 以降では画面出力を行うことが可能です。
一方、 Google Pixel 7 は USB 3.2 Gen2 の USB-C ポートを搭載していますが、 DisplayPort を出力するための専用チップを有していないため、 Android OS 側のソフトウェアアップデートでは対応することができません。
DisplayLink
概要
HID デバイスや指紋認証デバイス等を主に OEM で提供している米 Synaptics 社傘下の 米 DisplayLink 社が提供する方式となります。
デバイスの USB ポートに対応アダプターを接続して、ソフトウェア実装として画面を外部出力する方式となります。
Apple Silicon 搭載 Mac で製品仕様上の外部出力可能なディスプレイ数を超えて出力するために利用されるケースもあります。
必要なもの
DisplayLink 対応アダプターが必要となります。
いくつかのベンダーから対応製品が発売されているため、 Android デバイスへ対応した製品を用いてください。
また、デバイス側に専用アプリ (DisplayLink Presenter) が必要となります。
利用における注意点
なお、 HDMI のコピー防止技術である HDCP に対応していないため、著作権保護されたコンテンツ (動画配信アプリ等) は基本的に利用することができないため、この用途での利用は注意してください。
Chromecast
概要
米 Google 社が提供する方式となります。
デバイス全体や特定のアプリの画面投影や、動画配信アプリ等でコンテンツをテレビで視聴するたに利用されることがあります。
必要なもの
Chromecast 対応のテレビやモニター、米 Google 社の販売する Chromecast with Google TV 等のハードウェアが必要です。
また、接続先のデバイスと投影元のデバイスは同じ Wi-Fi ネットワークに接続され、双方が直接接続できる必要があります。
利用における注意点
同一の Wi-Fi ネットワークに接続する必要があるため、企業ネットワークではルールとして利用できない場合や、 Wi-Fi 側の制御として機器間の通信が制限されていることで利用できない場合があります。
また、モバイル Wi-Fi ルーターを活用する方法もありますが、接続拠点を変更した場合に接続が期待どおりに行えないケースや通信状況の影響を受けるケースがあります。
顧客へのデモとして利用する場合、この点において十分に注意する必要があります。
画面表示アプリ
概要
デバイスの画面をアプリでキャプチャを行い、キャプチャデータを別の PC で表示するようなソリューションを活用する方式です。
必要なもの
デバイス上の画面をネットワーク経由で投影することが可能なソリューションが必要です。
Workspace ONE では、アドオン製品として Workspace ONE Assist が提供されており、本方式として活用することが可能です。
また、本方式で投影したものを映像出力するための PC 等が別途必要となり、そのデバイスにおいて映像出力が可能である必要があることも注意してください。
利用における注意点
デバイスの OS がAndroid 10 以降では、 OS 側のプライバシー保護機能により接続時に毎回キャストの許可を行う必要があります。
遠隔操作が行えるからとデバイスを遠隔地へ設置して直接操作が行えない状況は回避してください。
なお、 Workspace ONE Assist を活用する場合、この制限は Unattended Mode の Assist アプリと、 Zebra、 Samsung、 Motorola のデバイスを組み合わせることで、専用サービスアプリや OEMConfig アプリで設定を行うことにより回避することも可能です。
おわりに
デバイス画面を投影する方法について、備忘録をかねてまとめてみました。
デバイスが対応しているのであれば、 DisplayPort Alternate Mode が最も安定的かつ簡単に利用が行えると思います。
また、この執筆を行うに当たり DisplayLink アダプターに興味を持ったため入手しました。
こちらもアプリのインストールは必要ですが、 DisplayPort Alternate Mode に非対応の Google Pixel 6a でも簡単に利用することができました。
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